『SSSS.GRIDMAN』4話感想 ずれた座席1列ぶんの径庭――百合×セカイ系のテーゼ
ホントならまず1話について書けよという感じなのですが、なんとなく伏線らしいものが出そろってきた感があるので、ちょっとここらで語ってみたくなりました。
というわけで4話「疑・心」の感想です。
4話は比較的日常回っぽいテイスト。なみこ・はっすらに誘われてYouTuberとの合コンに行くことにした六花と、グリッドマンの正体を探るアカネがそこに接触するという構図。裕太が六花への恋心を自覚するという「まあ、せやな……(知ってた)」なラブコメ要素も。
3話ではキャリバーさん含めた新世紀中学生が揃い踏みしたこともあり、ずいぶん画面が賑やかになってきました。これまで以上に軽快なカットワークで、群像らしい見せ方。パロディも盛り盛りで情報量がすごかったですね……。
ただ、これまではあくまで傍観者としての立ち位置を崩さなかった六花が、ようやく物語に深く食い込んでいきそうな予感が描かれ、そこが今回一番の見所かと思います。
で、実はここまで来てもまだ戦う理由は明らかになっていないんですよね。
「敵」であるアカネもまた、この世界の謎についておそらくアレクシスからは聞かされていない様子で、グリッドマンの正体についてもまだ確証が持てていない。
対するグリッドマン側は、それ以上に持っている情報量が少ない。「迫り来る危機からこの街を救うこと」という使命だけで戦っている状態。何と戦っているのか、「戦う」ということが何を意味するのか、それがまだ明らかになっていない。
この「戦う意味」、ひいてはこの世界の謎についてが物語の大きな求心力になっているのですが、それと同時にキャラクターの個人的な問題がフォーカスされ、主題に絡み合っていく。ただし、実は主人公の裕太についてはまだ記憶を失ったままであることもあって、今のところはほとんど触れられていません。
六花の問題
1話からは、一見誰とも仲良くしているように見える六花が、なんとなく周囲と距離を置いている感じが丹念に描かれてきました。
2話では内海による台詞「ていうか六花って、そんな問川たちと仲良かったっけ?」がそれをさりげなく裏付け、3話では一人でコンビニ弁当を食べる六花の様子が、アカネ&アンチの食卓シーンと対比的に描かれています。そして自分が着信無視しておいて、それを後悔する六花の面倒くささ……本当に可愛いな……。
電話に出なかったことを悔やみ、裕太を叩こうとして服の袖をかすめる立花……彼女の人との距離の取り方が、なんだかとても寂しくて愛おしい。もしあの瞬間が、立花が裕太に触れる描写だったら「裕太に触れたい」という想いこそ描かれ得なかったわけですよ。
— 元家千佳 (@motoietchika) 2018年10月21日
アカネの問題
2話からはアカネの内的な描写が前面に押し出され、3話でのアンチとの会話における「うん、怪獣。一緒に朝ごはんを食べてくれる怪獣」という、ねじくれた存在肯定の台詞からは、アカネが疑似家族を作ろうとしているような印象を受けました。アレクシスがアカネに対してかける優しい言葉も、まるで親が子に対して言うようなものばかり。クラスメイトの間では「お嬢さま」で通っているアカネの邸宅に、家族の不在が強い違和感を伴って描かれているのも偶然ではないはず。
4話では潜入捜査のために合コンに潜り込んだアカネですが、YouTuberたちの振る舞いに耐えかねて途中でカラオケボックスを退出してしまいます。*2
六花とアカネの関係性
そして4話ではついに六花とアカネの関係性にフォーカスされますが、その距離感はEDアニメーションで描かれる二人の様子とは対照的であることが分かります。
登校中のバスを待つ六花のところへ、アカネが現れる。
六花「すごい久しぶりな気がする」
アカネ「何が?」
六花「ほら、うちら家近いし、前はよく朝一緒に学校行ったりしたけど。最近あんまり話してなかったっていうか……」
アカネ「そうかな? 全然気づかなかった」
六花はアカネのことをずっと気にかけていた様子。その一方でアカネはあっさりしたもので、あくまでグリッドマンの正体を探るために六花に接触しているだけのように見えます。
心なしか距離を置くアカネに対して、六花はもどかしそうに会話の空白を噛みしめる。
学校に着くと、なみこ・はっすらに合コンに誘われる六花。そういうノリが苦手な六花は断ろうとする素振りを見せますが、そこへアカネが横から「じゃあ私行こっかなー」と割り込んでくる。
アカネ「六花も行くんでしょ?」
六花「……もちろん」
そしてこのあと新世紀中学生のボラーに「良いことあった?」と尋ねられ、六花は合コンに誘われたことについて話すのですが、六花にとって本当に「良いこと」というのはおそらく、アカネと久々に話せたこと&合コンという名目でアカネと遊びに行く予定ができたことだと思うんですよね。
そして、そのことに無自覚な六花……。
BパートではYouTuber殺しを続ける怪獣を無事倒し、その翌日。冒頭と同じくバス停に立つ六花は、昨日と同じようにアカネがそこへ現れることを期待する……が、現れない。
#SSSS_GRIDMAN 4話。バス停でまた昨日と同じようにアカネが来ることを期待している六花、LINEグループのメンバー一覧(アカネのアイコンがある)を眺めているのエモすぎるな……
— 元家千佳 (@motoiethicka) 2018年10月29日
そしてぼそっと呟かれる「来ないな」…………………… pic.twitter.com/xVxnXFpiVh
当のアカネはグリッドマンを倒すことに執心し、六花のことなど眼中にない様子なのでした。
Aパートでの登校シーンとは対照的に、今度は一人でバスに乗る六花。
「なんで私の周りばかり、怪獣が出てくるんだろう。……私のせい、かな」
はい!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!
優勝!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!
これまでグリッドマンVS怪獣という構図が繰り返し描かれてきたところへ、加えて六花―アカネの関係性がそれに次ぐ主題として浮き彫りになった4話でした。
そして4話のラストにおけるこの六花のモノローグは、これまで傍観者でしかなかった六花が実は問題の中心にいるかもしれないと自覚し始める――つまり、ここでは「グリッドマンVS怪獣」の構図に「六花―アカネの関係性」の構図が直結する可能性が示唆されています。
これまでの積み上げがあったからこそ、このモノローグは強烈な百合×セカイ系のテーゼとして立ち現れてくるのです。
いずれアカネの前に「君を退屈から救いに来たんだ」*3と現れるのはグリッドマンではなく、六花なのかもしれません。
4話で六花が「BELIEVE」を口ずさんでいた*4のも暗示的。
たとえば君が 傷ついて
くじけそうに なった時は
かならずぼくが そばにいて
ささえてあげるよ その肩を
今後、この二人の関係がどうなっていくのか。EDアニメーションについても考察してみたいところです。*5
余(雑)談
「お客様」
アレクシスがグリッドマンたちのことを、「お客様」と呼んでいるのが奇妙。つまりアレクシスにとっては自分たちが「ホスト」で、グリッドマンたちが「ゲスト」だということだろうか。この世界はゲーム? プレイヤーのしての裕太たち? みたいな邪推が働く。
そして実はもう一人、「お客様」という言葉を使ったキャラクターがいる。3話では六花ママが、店にいる新世紀中学生たちに驚いて放った台詞「どぅわっ! 何!? 人多っ……! 新しい……お客様?」があくまでコミカルに演出されていたが、これも実は奇妙。なぜなら普通の町の人にとっては、新世紀中学生たちの姿は視認することができないからだ*6。六花ママも何らかの形でグリッドマンやアレクシスたちの確執に関与している可能性は、少なくともゼロではないだろう。
アカネたちの名前の頭が全部「ア」で統一されている(ex.アレクシス、アンチ)ことから、もし六花ママの名前が明かされ、それが「あ」から始まるものだったらドキッとすることになります。*7
パロディ
・バスの車内にうーさーがいる。
・YouTuber集団Arcadiaのメンバーは全員『超時空要塞マクロス』の玩具会社にちなんだ名前になっているらしい(これは今調べて知った)
・アカネのLINEアイコンがウルトラマンティガ、ダイナに出てくるレギュラン星人だったらしい(にゃるらさんのブログで知った……)
・今回の怪獣ゴングリーが『帰ってきたウルトラマン』に出てくる「ツインテール」と「グドン」ぽい? グドンはツインテールを捕食しており、なんとなく4話での怪獣同士の対立と重なるところがあった。しかし特撮のことはわからん。
・今回の必殺技「超電撃キック」の元ネタが『トップをねらえ!』の「スーパーイナズマキック」。
キャラのここがよかった
・棚の高いところにある物を取ろうとする六花の尻
・合コンでもマスク取らないはっす
・六花たちを探すためにカラオケの個室をバァン! と開くキャリバーさん可愛い
・アカネの帰りを待つアンチ、健気
・図体のわりに意外と裕太たちを気にかけてくれるマックスさん……
マックス「彼女のことが好きなのか。好きなんだな。好きなんだろ」
裕太「はい。……たぶん」
マックス「まどろっこしいな、お前たちは。でも――嫌いじゃない」
・微妙に会話がズレてるグリッドマン。つーかおまえも記憶喪失やったんかい!!!!!
・裕太「六花のおかげで勝てたと思う」←素直かよ!!! かわいい!!!
・登場人物みんな不器用なのが愛おしい……
ゴミ袋作画
アカネんちのゴミ袋、うっすら中身も描かれてるカットがある気がする(気のせいかもしれない)。
『東京ゴッドファーザーズ』でのゴミ袋作画を思い出しました。本当に贅沢な作画だな。
以上です。
「俺にしかできないこと、それが俺のやるべきこと――!」
みんな、とにかくSSSS.GRIDMANを観てくれ。それが君のやるべきことだ。
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*1:誤字:×立花→○六花
*2:エレベーターの「閉」ボタンを連打するアカネ。
*3:オープニング主題歌『UNION』の歌詞より。OPアニメーションでは、この歌詞のところでアカネの前にグリッドマンが颯爽と登場する
*4:卒業式でよく歌われる曲。もしかしたら六花とアカネの関係は小学校・中学校に遡ることができるのかもしれない。ちなみに放送直前PVでもその口ずさむ歌声が使われている
*5:季節が夏である本編に対して、EDではキャラクターの制服が冬服になっています。しかしそれが過去なのか未来なのかさえ、今のところは判断できない気がします
*6:より正確に言えば、「意識されない」感じだろうか
*7:追記。六花の家のジャンクショップの名前が「絢(あや)」だという点を見落としていました……。ガチ不穏ですね。コメントで指摘してくださった方、ありがとうございます!